最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)915号 判決 1956年10月12日
主文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
訴訟費用は原審、当審とも被上告人の負担とする。
理由
本件上告理由は別紙記載のとおりである。
原判決は問屋と委託者との間においては委任及び代理の規定(民法一〇四条一〇七条等)もその趣旨に反しない限り準用があるとなし、問屋である訴外市場は、控訴人(被上告人)との委託契約によつて受託した西瓜の販売を已むを得ない事由によりさらに同種の問屋たる被控訴人(上告人)に再委託したものであるから、被控訴人(上告人)は直接控訴人(被上告人)に対し訴外市場と同一の権利義務を取得し、その販売によつて得た代金中から報酬(手数料)及び立替金等を控除した残額を控訴人(被上告人)に支払う義務があるものと判示し控訴人(被上告人)の請求を認容しているのである。
しかしながら、問屋と委託者との法律関係はその本質は委任であり商法五五二条二項が両者の間に委任及び代理に関する規定を準用すると定めているのは、委任の規定を適用し、代理の規定を準用する趣旨であり、そして代理に関する規定中民法一〇七条二項は、その本質が単なる委任であつて代理権を伴わない問屋の性質に照らし再委託の場合にはこれを準用すべきでないと解するを相当とする。されば原判決が、その認定にかかる本件事実関係において控訴人(被上告人)と被控訴人(上告人)との間に民法一〇七条二項の準用があるとし被控訴人(上告人)は直接控訴人(被上告人)に対し訴外市場と同一の権利義務を取得したものであるとの前提の下に控訴人(被上告人)の本訴請求を容れ、被控訴人(上告人)に対し主文記載の支払を命じたことは法律の解釈適用を誤つた違法があるといわなければならない。
よつて論旨は理由があり原判決は破棄を免れないので、民訴四〇八条一号によつて自判すべきものと認め、訴訟費用の負担について同九六条、八九条を適用し、裁判官全員一致の意見をもつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)